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2024
FA業界新年賀詞交歓会
業界展望、今年の受注見通し
700人超のFA企業幹部が一堂に今年は反転上昇に期待
ニュースダイジェスト社(ND)が主催する「2024FA業界新年賀詞交歓会」が1月11日に開かれた。今年の工作機械産業の展望について、NDの八角秀編集長は1兆3000億円、日本工作機械工業会(日工会)の稲葉善治会長は1兆5000億円とそれぞれ見通しを発表した。NDマーケティング大賞を受賞したユニオンツールの片山貴雄会長にはブロンズ像が贈られ、DMG森精機の森雅彦社長、THKの寺町彰博会長最高経営責任者、オークマの家城淳社長の3人が登壇するトップインタビューも開かれた。
業界展望
月刊生産財マーケティング
編集長 八角秀
2024年受注見通し
1兆3000億円
2023年の工作機械受注総額は12月分を推定した上で、前年比15.9%減の1兆4800億円となったもよう。
直近のピークの22年3月以降、2年ほど軟調が続いているが、受注総額は非常に高い水準。近年の工作機械は単体ではなくソフトウエアや自動化装置などとの組み合わせが多く、近年は平均単価が上昇傾向にある。
24年の受注総額は同12.2%減の1兆3000億円と予測している。内訳は内需が同6.3%減の4500億円、外需が同15.0%減の8500億円だ。中国の経済回復には構造的な改革が必要で、景気低迷はしばらく続くだろう。一方、欧米市場は大崩れすることなく、堅調に推移すると見込む。地政学的リスクや気候の激甚化などリスク要因が多く、今年は変化の年になる。
FA各社が今後を生き抜くためには「この30年で得た成功体験をリセットする」ことが重要だ。従来の財務の考え方を見直し、今後国内で進むインフレに合った経営が必要になるだろう。また、特定の企業や産業に依存せず、価格交渉力を高く維持できるかも重要で、FA各社には常に新しい顧客を開拓する営業力が求められる。
今年の受注見通し
日本工作機械工業会
稲葉善治 会長
2024年受注見通し
1兆5000億円
2023年の工作機械受注総額1兆4800億円のうち、内需は4800億円、外需は1兆円となったようだ。いずれも3年ぶりに前年比を下回ったが、外需は3年連続で1兆円を超えた。電気自動車(EV)や半導体関連の市場で調整局面が続いているのに加え、中国の不動産問題に端を発する景気の低迷が影響した。
国際情勢の先行き不透明感が増す中、日工会は24年の工作機械の受注総額を前年比1.4%増の1兆5000億円と見通している。内訳は内需が同10.4%増の5300億円、外需が同3.0%減の9700億円だ。
内需は昨年より増加を見込む。経済産業省を中心としたさまざまな補助金に加え、生産の自動化などのニーズが市場を後押しするとみる。需要が落ち着いている自動車や半導体関連は、今年の後半から盛り返すと考えられる。特に欧米や中国、インドなどで半導体製造装置向けの投資が活発になるだろう。一方、外需は欧州で金利の引き下げが春ごろから始まり、中小企業が設備投資意欲を取り戻す。中国市場は現在の低迷が底を打ち、上昇することに期待する。欧米の市況を踏まえると外需の見通しは固い。
NDマーケティング大賞
第39回NDマーケティング大賞贈呈式(ユニオンツール 片山貴雄会長)
第39回NDマーケティング大賞の贈呈式では、同賞選考委員長の清水伸二日本工業博物館長・上智大学名誉教授が、ユニオンツールの片山会長の受賞理由を説明。「健全経営を実践し、プリント基板(PCB)用ドリルの安定供給で世界の電子機器産業の発展に多大な貢献をした」と業績をたたえた。
片山会長にはNDの樋口社長から顕彰状が、前回受賞者の碌々スマートテクノロジーの海藤満会長からブロンズ像が手渡され、出席者からは盛大な拍手が送られた。
受賞講演概要
受賞記念講演では片山会長が、自社の強みについて「工具開発、設備開発、膜(コーティング)開発は3本柱」と語り、生産設備の内製化にも力を入れてきたことを紹介した。
新春トップインタビュー
テーマ「時代の転換点を突破する」
2024 FA業界新年賀詞交歓会では、恒例の目玉企画として「新春トップインタビュー」が実施された。「時代の転換点を突破する」をテーマに、DMG森精機の森雅彦社長、THKの寺町彰博会長最高経営責任者(CEO)、オークマの家城淳社長の経営トップ3氏が登壇。今年のFA業界の見通しや自社の経営戦略を熱く語った。司会はNDの樋口八郎社長が務めた。
DMG森精機
森 社長
どうなる今年のFA業界
MXの提案を推進
わが社は「マシニングトランスフォーメーション(MX)」の提案を推進する。MXとは、工程集約、自動化、グリーントランスフォーメーション(GX)、そしてこれらを支えるデジタルトランスフォーメーション(DX)から成る新たなコンセプトだ。高精度な5軸加工機や複合加工機で工程集約をすれば、加工時間が長くなり自動化がしやすくなる。設備台数や中間在庫も削減できるため、GXも実現できる。
また「グローバルキーアカウント」と呼ぶ、年商が数千億円から数兆円規模のグローバルな大企業への提案もさらに強化する。こうした顧客を100社以上抱えており、20人ほどの専属の担当営業がサポートしている。
わが社の経営戦略
廉価販売や短納期受注から脱却
廉価販売や短納期受注からの脱却を進めており、単純な2軸のCNC旋盤や3軸の立形マシニングセンタの販売にはあまり注力しない方針を掲げている。
一方、古い工作機械の更新需要が今後ますます拡大すると思われるため、そこに大きなビジネスチャンスがある。また、最近は自動車産業でも工機部門が縮小しつつあり、「工作機械のことは工作機械メーカーに任せる」とのスタンスの企業が多くなった。そこにも商機が見込める。
この他、主軸のリビルドや鋳物のリサイクルなどの「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の推進にも取り組んでいる。
THK
寺町 会長CEO
どうなる今年のFA業界
昨年よりも追い風
国際通貨基金(IMF)が昨年10月に発表した予測によると、今年の世界経済の成長率は2.9%となりそうで、マクロ的な経済環境は決して良くない。
しかし、今年は半導体関連産業を基軸に、設備投資の需要が増えると期待できる。また、深刻な人手不足の問題もあるため、自動化やロボット化のニーズもさらに高まる。わが社の売上収益の推移も地政学的なリスクがなければ、今年、来年、再来年と順調に拡大できるだろう。
対象の地域や顧客の業界ごとに違いはあるが、FA業界にとっては相対的に追い風が吹くと考えている。
わが社の経営戦略
自社開発のEVを発表
「ものづくりサービス業」を目指し、「ビジネススタイルの変革」「グローバル展開」「新規分野への展開」の3つの軸で事業を展開している。グローバルでの生産体制を拡充して生産能力の増強に取り組むと同時に、サービス産業などの新規分野を見据えた製品開発にも注力したい。
顧客の設備総合効率(OEE)を最大化できるよう、製造業向けのモノのインターネット(IoT)サービス「OMNIedge(オムニエッジ)」の提案も強化する。
また、わが社はEV関連技術の研究開発にも取り組んでおり、昨年東京で開催された「ジャパンモビリティショー2023」で自社開発のEVのプロトタイプ「LSR-05」を発表した。
オークマ
家城 社長
どうなる今年のFA業界
底堅い需要プラスアルファ
昨年のFA業界を振り返ると、底堅い需要が形成された2022年と比べると構造的には大きな変化はなかったものの、国内市場では半導体製造装置関連の設備投資需要が一服したり、中国市場では電気自動車(EV)への過剰な投資が落ち着いたりと、それぞれの市場でマイナスアルファの要素が見受けられた。
底堅い需要とは、労働人口の減少や脱炭素化、デジタル化への対応といった市場の根底にあるニーズを指す。
今後のFA業界は22年の時点である程度顕在化したこれらの底堅い需要に対し、国内、米国、欧州、中国などの市場ごとの需要がプラスアルファの要素として加わる流れになると考えている。
わが社の経営戦略
「協創」が重要に
今後は「協創」が重要になる。日本工作機械工業会も協創に注力しており、その事例の一つに「加工システム研究開発機構」がある。わが社を含む複数のメーカーや大学が連携し、新構造材を適用した工作機械の研究開発を進めてきた。
わが社は大学とも協創しており、20年には名古屋大学に「オークマ工作機械工学館」を設立した。施設には、実習や研究に使用する最新鋭の工作機械を設置している。顧客との協創も重要で、昨年9月にはさいたま市中央区に「東日本CSセンター」を開設した。また、鋳物部品の製造を完全自動化する技術を木村鋳造所(静岡県清水町、木村寿利社長)と開発するなど、ビジネスパートナーとの協創も進めている。