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2023
FA業界新年賀詞交歓会
業界展望、今年の受注見通し
3年ぶりに通常開催23年も実需は底堅い
ニュースダイジェスト社(ND)が主催する「2023 FA業界新年賀詞交歓会」が1月12日、名古屋市熱田区の名古屋国際会議場で開かれた。FA業界の経営者など686人が出席した。今年の工作機械産業の展望について、NDの八角秀編集長は1兆5000億円、日本工作機械工業会(日工会)の稲葉善治会長は1兆6000億円とそれぞれ見通しを発表した。第38回NDマーケティング大賞を受賞した碌々産業(東京都港区)の海藤満社長には顕彰状とブロンズ像が贈られ、FA関連団体の各会長が一堂に会する特別プログラムも開かれた。
業界展望
月刊生産財マーケティング
編集長 八角秀
2023年受注見通し
1兆5000億円
2022年の工作機械受注総額は前年比15.5%増の1兆7800億円となったもようだ。国内外とも大崩れはしなかった。しかし、製造原価が高まっており、従来は日本工作機械工業会(日工会)の月間受注額で1000億円が好況の目安とされていたが、近年はその基準が1~2割ほど上がっているとみられる。
23年の受注総額は前年比15.7%減の1兆5000億円と見通す。内訳は内需が同11.3%減の5500億円、外需が同18.1%減の9500億円だ。今年は全体経済に悪化の懸念があるが、設備需要は底堅く推移するだろう。内需は電気自動車(EV)関連の投資が本格化する期待感があるが、実質的な金利引き上げが需要を下押しする。また、外需は全体的に景気後退の懸念がありそう。
今年のキーワードは①混迷の国際政治②相互作用する経済問題③EV化の今後④製造業の構造変化――の4つ。製造業では、需要側の変化ではなく供給側の課題を解消するため、構造変化が進むとみられる。市場原理では本来、需要側の変化に応じて設備投資がなされる。しかし、全体経済が停滞し始めた中でも、設備投資需要は底堅い。その背景には、インフレによるコスト増加や人手不足、環境対応、サプライチェーンの再編など、供給側の課題がある。供給側に「作り方改革」が求められ、それが設備投資需要につながっている。
今年の受注見通し
日本工作機械工業会
稲葉善治 会長
2023年受注見通し
1兆6000億円
2022年の工作機械受注総額は、同年9月に上方修正した1兆7500億円に達したもようだ。ロシアによるウクライナ侵略や中国のロックダウン、国内の感染再拡大などリスク要因が多く存在したが、半導体関連や電気自動車(EV)関連の需要が好調だった。その結果、外需は22年3月から3カ月連続で1000億円を超えるなど、年間受注額が過去最高だった18年並みの水準が続いた。内需も各種補助金の後押しなどがあり、500億円前後で推移した。
23年の工作機械受注総額の見通しは前年比8.6%減の1兆6000億円。内訳は内需が同8.3%増の6500億円、外需が同17.4%減の9500億円だ。もし達成できれば、過去4番目に高い水準となる。現在は調整局面に入りつつあるが、内需は設備投資が持続して高い水準で推移しそう。ニュースダイジェスト社との1000億円の差は、内需の見通しにある。
一方、外需は経済減速の影響が見られるが、中国やインド、欧米では半導体関連や自動車、次世代通信規格(5G)などを中心に旺盛な投資意欲が期待できる。
受注見通しを策定するに当たり、例年2人の学識経験者にも意見を求めるが、今年は意見が割れに割れた。今年の見通しはそれぐらい難しい。何が起こるか分からないような状況だが、次の年に着実につなげる1年にしたい。
NDマーケティング大賞
第38回NDマーケティング大賞贈呈式(碌々産業 海藤満社長)
NDマーケティング大賞選考委員長の清水伸二日本工業博物館長・上智大学名誉教授が、碌々産業の海藤社長の受賞理由などを説明。「微細加工機という新しいジャンルを確立。加工技術者の育成や地位向上など微細加工機市場を持続可能とするための取り組みも強力に行っている」と業績をたたえた。
海藤社長にはNDの樋口社長から顕彰状が、前回受賞者のファナック稲葉善治会長からブロンズ像が手渡され、出席者からは盛大な拍手が送られた。

受賞講演概要
テーマは「200年企業をめざして! 当社の試行錯誤」。「わが社は今年で120周年。企業は継続が第一使命で、200周年を目指して取り組んでいる。小さい企業が生き残るには、ニッチトップ戦略が一番良い」と話した。
新春トップインタビュー
テーマ「どうなる今後のFA業界」
日本工作機械工業会の稲葉会長、日本工作機器工業会の寺町彰博会長、日本ロボット工業会の山口賢治会長、日本精密測定機器工業会の吉田均会長、日本機械工具工業会の佐橋稔之副会長、日本工作機械販売協会の高田研至会長の6人が登壇した。司会はNDの樋口八郎社長が務めた。
日本工作機械工業会
稲葉善治 会長
日本初のスマートファクトリー
今年の工作機械受注は前年比8.6%減の1兆6000億円になると見通す。内需が同8.3%増の6500億円、外需が同17.4%減の9500億円。内需は力強く推移するが、外需はマイナス幅が大きくなるとみている。
当工業会は「デジタル化」「グリーン(環境対応)」「レジリエンス(強じん化)」の3つに注力する。工作機械業界を取り巻く環境は不透明だ。しかし、電気自動車(EV)などの新たなニーズが生まれるとともに、現在は新たな生産形態が求められる過渡期でもある。これに対し、各工業会と協力しながら、日本発のスマートファクトリーを提案したい。
日本工作機器工業会
寺町彰博 会長
中長期的にはチャンス広がる
当工業会は「部分品」「工作物保持具」「工具保持具」「附属機器」の4部会で構成されている。昨年の工作機器の販売額は同11%増を見込んでおり、2018年に次ぐ過去2番目の成績になりそう。今年の見通しはまだ策定中だが、昨年とほぼ同じ水準になると考えている。
現在は「VUCA(変動、不確実、複雑、曖昧)」の時代と言われている。短期的には地政学的リスクが最大の課題で、FA業界は全体的に調整局面に入りつつある。しかし、コネクティッド(接続性)やオートノマス(自律性)の進展と合わせ、中長期的にはビジネスチャンスが広がるだろう。
日本ロボット工業会
山口賢治 会長
生産額は初の1兆円へ
昨年のロボットの受注額は同2.9%増の約1兆1100億円、生産額は同5.5%増の約9910億円と、堅調な自動化需要に支えられて共に増加した。今年の受注額は同3.6%増の約1兆1500億円になると見通す。生産額は同6.0%増の約1兆500億円で、初めて1兆円を超えるのではないかと期待している。
今年の重点施策は①「50年史」の編さんなど50周年事業の総仕上げ②「第24回実装プロセステクノロジー展」や「2023 国際ロボット展」の実施③ロボット市場の拡大に向けた取り組み④産学連携の強化⑤国際標準化活動や国際交流の推進――の5つだ。
日本精密測定機器工業会
吉田均 会長
販売先の構成が変化
昨年の測定機器の販売額は約1113億円になった。18年と比べると販売先の構成が変化したのが特徴で、従来は自動車関連が約6割を占めていたが、昨年は約4割まで落ちた。代わりに半導体関連の需要が急増し、自動車関連の減少分をカバーした。今年の販売額は昨年並みになるとみている。EV化の影響も含めた自動車業界の動向や、半導体業界の動向が今年のポイントになる。
当工業会では測定機器の自動化対応やネットワーク対応に加え、輸出強化にも注力したいと考えている。
日本機械工具工業会
佐橋稔之 副会長
過去最高を超えたい
当工業会では、機械工具の生産額を4月~翌年3月までの年度で集計している。22年度の見通しは5000億円に到達するとみている。足元では懸念事項が多いが、最大顧客である自動車業界の回復や航空機業界の復調、半導体や電子関連の小型部品の需要拡大が期待できるため、23年度は過去最高だった18年度の5194億円を超えたい。
EV化の進展に伴い、機械工具の需要は中長期的に確実に減少するだろう。当工業会ではEV化への対応に加え、デジタル化や環境対応にも取り組む。各工業会との連携も強化したい。
日本工作機械販売協会
高田研至 会長
コーディネーターの役割を
当協会では営業担当のスキルを高めるため、「SE教育」に注力している。SE教育は新入社員から入社2年目程度までを対象とした「基礎講座」、3年以上の営業経験を持つ社員向けの「SE講座」、SE講座を更新する「SE更新講座」の3つで構成されている。1991年に始まり、これまでに累計1万人以上が受講した。
機械商社は幅広いメーカーとの取引があり、さまざまな情報を持っています。そのため、各工業会がこれから連携を強化する上で、機械商社がコーディネーター(調整役)としての役割を務めることが大事になる。