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受賞者インタビュー
受賞者インタビュー
第38回マーケティング大賞
碌々産業
社長
海藤 満 氏

微細加工市場を作る
「存亡の危機でしたからね。自社の強みは何かをとことんまで考えた結果、『キサゲができること』と気付き、微細加工の世界に突き進みました――」
碌々産業の海藤満社長は2008年のリーマンショックをそう振り返る。
さかのぼること30年前、1990年代の初めに、次世代の新しい柱を打ち立てるべく碌々産業ではプロジェクトチームが組まれた。当時、経営企画の責任者をしていた海藤氏が主要メンバーに抜擢された。苦心の末に開発した微細加工機「MEGA(メガ)」を96年に市場投入した。「おそらく微細加工機と活字にしてカタログに載せたのはわが社が業界初」と海藤社長は胸を張る。79年にソニーが発売した携帯型音楽プレイヤー「ウォークマン」を見て、当時社会人一年生だった海藤氏は衝撃を受けた。エンジニアではなかったが、『人間は全て携帯したがる。従ってこれからはこぶし大の製品が主流になる。そんな製品向けの部品が必要になる』と思い続けた結果が96年のメガだった。
ところが鳴り物入りで開発したこの製品が2年間全く売れない。「微細加工という市場がそもそも存在しなかったんですよ。工具や周辺機器もあまりなかった」(海藤社長)。しかし、次第に工具メーカーが参入し、ソフトウエアも充実し始め、徐々にではあるが「微細加工市場」は形成されていった。
そしてリーマンショックが訪れる。ニッチトップ(隙間市場の頂点)を目指すならグローバルで市場を取らねば、との考えのもと、キサゲの強み-高精度と高剛性-を生かした微細加工機を会社の主力事業に据えた。すると、産業のグローバル化、半導体関連産業の大幅な伸長、部品の微細化、金型の高精度化など、全てが追い風となった。時代が、海藤社長の描いた未来にようやく追い付いた。
(本誌編集長 八角 秀)
- 碌々産業
- 1903年創業、1912年から自社製ボール盤の製造販売を開始した工作機械メーカー。現在は微細加工機を中心に、プリント基板加工機、特殊加工機を3本柱とし、「微細加工機のリーディングカンパニーへ」をテーマにグローバル展開する。